カーボカウントは,1型糖尿病など,インスリンを使用している糖尿病における,超速効型/「超」超速効型インスリンの投与量を調整する方法だよ.
カーボカウント#1. で説明した持効型インスリンの話と混同しないようにしよう!
お急ぎの方は,最後のまとめをチェックしてね!
カーボカウント;カーボ(糖質)のみを数える
どうしてカーボのみをカウントするか分かる?
カーボ量を正確にカウントできれば,カーボに合わせた超速効型/「超」超速効型インスリン量を決定できますね(下図).
意外かもしれないけど,食物繊維も炭水化物に分類される.例えば食物繊維であるキャベツやレタス,ワカメなども炭水化物の仲間だね.
食物繊維はほぼ0 kcaLで,血糖値も上昇しないから,糖尿病の世界では,食物繊維を除外してカーボカウントするよ.
また,カーボの中には,カウントしないカーボもあるよ.例えば,パルスイート®などに含まれるエリスリトールや,コカ・コーラゼロ®などに含まれるスクラロース,アスパルテームといった人工甘味料は,血糖値を上昇させないため,カウントしないカーボに分類される.
急激に血糖値に変換されるカーボ(糖質)のみをカウントし.カーボ量に合わせた超速効型/「超」超速効型インスリン投与量を決定する方法.
カーボカウント指導対象;インスリンを使用している糖尿病
カーボ(炭水化物)=糖質(人工甘味料はカウントしない)
基礎カーボカウント
糖尿病食を遵守することで,毎食の血糖上昇が一定になり,一定の「血糖変動パターン」ができるため,責任インスリンの概念を用いて超速効型インスリンの単位を決定できる.
責任インスリンとは?
これだけでは理解しにくいから,具体例で説明するね.
昼食前の血糖値が,「朝食の糖質量」と「朝食直前の超速効型インスリン」の2つによって影響を受ける血糖値だというのは理解できる?
つまり「朝にどれくらい糖質を摂取するか」と「朝に何単位のインスリンを打つか」によって昼の血糖値が決定される,ということですよね?
まだ分かりにくいから,いくつか具体例で確認しよう.
糖尿病食(毎食の糖質量が一定)が遵守できている状態では,朝食を食べ過ぎたという可能性は考えられない.
ということは,昼食前高血糖の原因は,朝食直前の超速効型インスリンが少なかったせい(責任)だと言える.
糖質量が一定だと,毎日昼食前に高血糖になりそう….
糖尿病食(毎食の糖質量が一定)が遵守できている状態では,昼食が少な過ぎたという可能性は考えられない.
ということは,夕食前低血糖の原因は,昼食直前の超速効型インスリンが多すぎたせい(責任)だと言える.
糖質量が一定だと,毎日夕食前に低血糖になりそう….
だけど「直感」と「変更すべき責任インスリン」が異なる場合もあるよ.間違って解釈しないように確認しておこう.
「直感」と「変更すべき責任インスリン」が異なる場合
これは,責任インスリンである昼食直前の超速効型インスリンが適切だった,ということだろうか?
昼食前血糖値を見ると,血糖値 200 mg/dLと高血糖ですね.つまり,昼の超速効型インスリンは,昼食の糖質量による血糖上昇のみならず,さらに血糖値を-100 mg/dLして,夕食前血糖値 100 mg/dLまで下げた,ということですか?
ところが,夕食前血糖値 100 mg/dLとなっているのは,糖質量を超えた過剰なインスリン投与だと言えるね.
でも,責任インスリンである昼食直前の超速効型インスリンを減量すると,夕食前血糖値も高血糖になってしまいます.
昼食前高血糖の原因は,責任インスリンである朝の超速効型インスリンが少なかったからですね.つまり,朝の超速効型インスリンこそが真に増量すべきインスリンですね.
夕食前血糖値が正常でも,責任インスリンである昼食直前の超速効型インスリンが過剰な場合を示したね.
もう一つ,「直感」と「変更すべき責任インスリン」が異なる場合を見てみよう.
これは,責任インスリンである夕食直前の超速効型インスリンが少なかった,ということだろうか?
確かに寝る前の血糖値は高いですけど,夕食前も同じ血糖値 250 mg/dLですね.
血糖値が同じということは,糖質による血糖上昇を夕食直前の超速効型インスリンがうまく処理した,ということですね?
寝る前の血糖値が高血糖だと,責任インスリンである夕食直前の超速効型インスリンを増量したくなるけれど,夕から寝る前にかけて血糖値が変わっていない(血糖値の差がない)から,適切なインスリン投与により,糖質による血糖上昇を処理したと考えられる.
よく見ると,昼から夕にかけて血糖値 105→250 mg/dLに上がっています.
夕食前高血糖の原因は,責任インスリンである昼の超速効型インスリンが少なかったからですね.つまり,昼の超速効型インスリンこそが真に増量すべきインスリンですね.
血糖値の変化をすべてインスリンの責任にできるのは,糖尿病食の遵守(毎食の糖質量が一定)が前提となっていることは忘れてはいけないよ.
超速効型インスリンの単位を変更する場合は,何単位ずつ変更したらいいでしょうか?
持効型インスリンと違う点は,超速効型インスリンの効果は3時間程度しか持続しないため,単位変更の翌日には血糖値がどう変化したかを確認できることだね.
ただし,「血糖変動のパターン」を見て単位を変更していくものだから,数日は変化を見守るほうがいいだろうね.
まとめ
カーボカウントとは・・・急激に血糖値に変換されるカーボ(糖質)のみをカウントし.カーボ量に合わせた超速効型/「超」超速効型インスリン投与量を決定する方法.
カーボ(炭水化物)=糖質(人工甘味料はカウントしない)
カーボカウントには,「基礎カーボカウント」と「応用カーボカウント」があり,基礎→応用へステップアップする.
基礎カーボカウント・・・糖尿病食・食品交換表の遵守と責任インスリン法による超速効型インスリン投与量の決定.
基礎カーボカウントの指導対象;インスリンを使用している糖尿病
責任インスリン・・・血糖値の責任となる超速効型インスリン
責任インスリン法では,一つの血糖値ではなく「血糖値の差」に注目.
超速効型インスリンの投与単位の調整は1〜2単位ずつ.1回きりの血糖変動ではなく,「血糖変動のパターン」を見ながら投与単位を調整.
参考文献;第8版 糖尿病専門医研修ガイドブック,はじめてのカーボカウント 4版