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1型糖尿病

カーボカウント#2. 〈カーボ=糖質,基礎カーボカウント,責任インスリン法〉

カーボカウントとは
医師
医師
持効型インスリン投与量が決定し,いよいよカーボカウントについてだね.

カーボカウントは,1型糖尿病など,インスリンを使用している糖尿病における,超速効型/「超」超速効型インスリンの投与量を調整する方法だよ.

カーボカウント#1. で説明した持効型インスリンの話と混同しないようにしよう!

お急ぎの方は,最後のまとめをチェックしてね!

医学生
医学生
カーボカウント#1. が気になる方はこちらからどーぞ!
カーボカウントとは
カーボカウント #1. 〈インスリンの基礎知識,持効型インスリンの調整方法,絶食試験〉この記事では,カーボカウントを習得する前に必要な前提知識,持効型インスリンの調整方法,絶食試験などについて「わかりやすい」をテーマに解説しています....

カーボカウント;カーボ(糖質)のみを数える

カーボカウントとは
医師
医師
カーボカウントのカーボは,炭水化物(Carbohydrate)のCarboだよ.つまり,カーボカウントとは,「摂取した炭水化物のみを数える」ということだ.

どうしてカーボのみをカウントするか分かる?

医学生
医学生
三大栄養素の中で,タンパク質や脂質は血糖上昇にあまり関与せず,急激に血糖値に変換されるのは,カーボのみだからですね!

カーボ量を正確にカウントできれば,カーボに合わせた超速効型/「超」超速効型インスリン量を決定できますね(下図).

カーボ量に合わせた超速効型インスリン カーボ量に合わせた超超速効型インスリン
医師
医師
カーボカウントでは,カーボ量に合わせた超速効型/「超」超速効型インスリン投与によって,糖質による血糖上昇を処理して食後の高血糖をおさえることを目標とするよ.
医学生
医学生
先生,「カーボ」と「糖質」はどう違うんですか?
医師
医師
カーボ(炭水化物)は,糖質と食物繊維に分類されるよ.

意外かもしれないけど,食物繊維も炭水化物に分類される.例えば食物繊維であるキャベツやレタス,ワカメなども炭水化物の仲間だね.

食物繊維はほぼ0 kcaLで,血糖値も上昇しないから,糖尿病の世界では,食物繊維を除外してカーボカウントするよ.

医学生
医学生
つまり,「カーボ(炭水化物)=糖質」として,カーボカウントでは「食事の中の糖質のみをカウントする」ということですね!
カウントするカーボとしないカーボ
医師
医師
そのとおり!カーボも糖質も同じ意味で用いるよ.

また,カーボの中には,カウントしないカーボもあるよ.例えば,パルスイート®などに含まれるエリスリトールや,コカ・コーラゼロ®などに含まれるスクラロース,アスパルテームといった人工甘味料は,血糖値を上昇させないため,カウントしないカーボに分類される.

カーボカウントとは?

急激に血糖値に変換されるカーボ(糖質)のみをカウントし.カーボ量に合わせた超速効型/「超」超速効型インスリン投与量を決定する方法.

カーボカウント指導対象;インスリンを使用している糖尿病

カーボ(炭水化物)=糖質(人工甘味料はカウントしない)

基礎カーボカウント

カーボカウント習得の流れ,基礎カーボカウント
医師
医師
カーボカウントの習得は基礎から始まって応用へとステップアップしていくまずは基礎カーボカウントについて学ぼう.
医学生
医学生
いよいよですね!
基礎カーボカウントとは?
医師
医師
基礎カーボカウントとは,「糖尿病食・食品交換表の遵守と責任インスリン法による超速効型インスリン投与量の決定」のことだよ

糖尿病食を遵守することで,毎食の血糖上昇が一定になり,一定の「血糖変動パターン」ができるため,責任インスリンの概念を用いて超速効型インスリンの単位を決定できる.

医学生
医学生
糖尿病食や食品交換表については,糖尿病教室#1. で学びましたね.毎食同程度の糖質を摂取すれば,確かに超速効型インスリン投与量も決定しやすそうです!
糖尿病教室 アイキャッチ
糖尿病教室 #1. 糖尿病とは〈血糖値,インスリン,糖尿病食〉糖尿病を初めて学ぶ人に向けて,「わかりやすい」をテーマに解説しています.本記事を読めば血糖値,インスリン,糖尿病食などについて学べます....
医学生
医学生
先生,責任インスリンってなんですか?

責任インスリンとは?

医師
医師
責任インスリンとは,「血糖値の責任となる超速効型インスリン」のことを指すよ

これだけでは理解しにくいから,具体例で説明するね.

責任インスリンとは?
医師
医師
上図の昼食前の血糖値に着目しよう.

昼食前の血糖値が,「朝食の糖質量」と「朝食直前の超速効型インスリン」の2つによって影響を受ける血糖値だというのは理解できる?

医学生
医学生
うーん…なんとなく.朝食を食べ過ぎると,昼は高血糖になりそうだし,朝にたくさんインスリンを打てば昼は低血糖になりそうです.

つまり「朝にどれくらい糖質を摂取するか」と「朝に何単位のインスリンを打つか」によって昼の血糖値が決定される,ということですよね?

医師
医師
そうだね!そして,糖尿病食・食品交換表が遵守できれば,毎食の糖質量は一定だから,「朝にどれくらい糖質を摂取するか」は無視して,「朝に何単位のインスリンを打つか(朝食直前の超速効型インスリン)」だけによって昼食前の血糖値が規定される,と考えられる.
医学生
医学生
毎朝同じような糖質量を食べれば,同じだけ血糖値が上がるから,そこに合わせて超速効型インスリンの量だけ決める,ということですね?
医師
医師
そのとおり!

まだ分かりにくいから,いくつか具体例で確認しよう.

昼食前高血糖の責任インスリンは朝食前の超速効型インスリン

医師
医師
上図では,昼食前に高血糖になっているね.

糖尿病食(毎食の糖質量が一定)が遵守できている状態では,朝食を食べ過ぎたという可能性は考えられない.

ということは,昼食前高血糖の原因は,朝食直前の超速効型インスリンが少なかったせい(責任)だと言える.

医学生
医学生
昼食前高血糖の責任インスリンは,朝食直前の超速効型インスリンということですね!

糖質量が一定だと,毎日昼食前に高血糖になりそう….

医師
医師
毎日,朝から昼にかけて血糖値が上昇する「血糖変動のパターン」が続く場合は,責任インスリンである朝食直前の超速効型インスリンを増量すべきだね.
夕食前低血糖の責任インスリンは昼食前の超速効型インスリン
医師
医師
上図では,夕食前に低血糖になっているね.

糖尿病食(毎食の糖質量が一定)が遵守できている状態では,昼食が少な過ぎたという可能性は考えられない.

ということは,夕食前低血糖の原因は,昼食直前の超速効型インスリンが多すぎたせい(責任)だと言える.

医学生
医学生
夕食前の低血糖の責任インスリンは,昼食直前の超速効型インスリンということですね!

糖質量が一定だと,毎日夕食前に低血糖になりそう….

医師
医師
毎日,昼から夕にかけて血糖値が低下する「血糖変動のパターン」が続く場合は,責任インスリンである昼食直前の超速効型インスリンを減量すべきだね.
医学生
医学生
糖尿病食を遵守することで,「血糖変動のパターン」と「変更すべき責任インスリン」が把握しやすくなりますね!
医師
医師
そうだね.ここまでの具体例では,直感的にも変更すべき責任インスリンを見つけやすかったと思う.基本的には,直感的に理解できる場面が多いよ.

だけど「直感」と「変更すべき責任インスリン」が異なる場合もあるよ.間違って解釈しないように確認しておこう.

「直感」と「変更すべき責任インスリン」が異なる場合

直感と異なる責任インスリン
医師
医師
上図の夕食前血糖値に注目しよう.血糖値 100 mg/dL(目標 100〜130 mg/dL)だから目標内の血糖値だね.

これは,責任インスリンである昼食直前の超速効型インスリンが適切だった,ということだろうか?

医学生
医学生
うーん…いいように思いますけど,先生がそう聞くから違うんだと思います笑

昼食前血糖値を見ると,血糖値 200 mg/dLと高血糖ですね.つまり,昼の超速効型インスリンは,昼食の糖質量による血糖上昇のみならず,さらに血糖値を-100 mg/dLして,夕食前血糖値 100 mg/dLまで下げた,ということですか?

糖質+αで血糖値を処理
医師
医師
そうだね!昼食の糖質量に合った超速効型インスリン投与では,夕食前血糖値 200 mg/dLとなるはず.

ところが,夕食前血糖値 100 mg/dLとなっているのは,糖質量を超えた過剰なインスリン投与だと言えるね.

医学生
医学生
夕の血糖値が正常でも,昼から夕にかけて,血糖値 200→100 mg/dLと下がっているようであれば,責任インスリンの減量を考えるべきなんですね.

でも,責任インスリンである昼食直前の超速効型インスリンを減量すると,夕食前血糖値も高血糖になってしまいます.

インスリン減量により高血糖に
医師
医師
そういう時は,そもそもなぜ血糖値 200 mg/dLまで上がったか,よく観察してみよう.
医学生
医学生
あ,よく見ると朝から昼にかけて,血糖値 100→200 mg/dLに上がっています.

昼食前高血糖の原因は,責任インスリンである朝の超速効型インスリンが少なかったからですね.つまり,朝の超速効型インスリンこそが真に増量すべきインスリンですね.

真に変更すべきインスリン
医師
医師
そのとおり!

夕食前血糖値が正常でも,責任インスリンである昼食直前の超速効型インスリンが過剰な場合を示したね.

医学生
医学生
この場合の正しいインスリン調整は,朝食直前の超速効型インスリン増量と昼食直前の超速効型インスリン減量でした.
医師
医師
責任インスリン法では,一つの血糖値だけに注目して責任インスリン投与量の増減を考えるのではなく,「血糖値の差」に注目して考えるよ.

もう一つ,「直感」と「変更すべき責任インスリン」が異なる場合を見てみよう.

寝る前の血糖値が高いけれど,責任インスリンが正しい場合
医師
医師
上図の寝る前の血糖値に注目しよう.血糖値 250 mg/dLと高血糖だね.

これは,責任インスリンである夕食直前の超速効型インスリンが少なかった,ということだろうか?

医学生
医学生
もうひっかかりませんよ笑

確かに寝る前の血糖値は高いですけど,夕食前も同じ血糖値 250 mg/dLですね.

血糖値が同じということは,糖質による血糖上昇を夕食直前の超速効型インスリンがうまく処理した,ということですね?

医師
医師
そのとおり!一つの血糖値ではなく「血糖値の差」に注目して考えるんだったね.

寝る前の血糖値が高血糖だと,責任インスリンである夕食直前の超速効型インスリンを増量したくなるけれど,夕から寝る前にかけて血糖値が変わっていない(血糖値の差がない)から,適切なインスリン投与により,糖質による血糖上昇を処理したと考えられる.

医学生
医学生
こういう時は,そもそもなぜ血糖値 250 mg/dLまで上がったか,よく観察するんでしたね.

よく見ると,昼から夕にかけて血糖値 105→250 mg/dLに上がっています.

夕食前高血糖の原因は,責任インスリンである昼の超速効型インスリンが少なかったからですね.つまり,昼の超速効型インスリンこそが真に増量すべきインスリンですね.

真に増量すべき夕食直前の超速効型インスリン
医師
医師
高血糖に惑わされることなく,「変更すべきインスリン」を見つけられたね!

血糖値の変化をすべてインスリンの責任にできるのは,糖尿病食の遵守(毎食の糖質量が一定)が前提となっていることは忘れてはいけないよ.

医学生
医学生
責任インスリン法を用いて,超速効型インスリンの単位を変更するイメージが湧きました.

超速効型インスリンの単位を変更する場合は,何単位ずつ変更したらいいでしょうか?

医師
医師
持効型インスリンと同じで,インスリン感受性には個人差があるため,1〜2単位ずつの変更をオススメするよ.

持効型インスリンと違う点は,超速効型インスリンの効果は3時間程度しか持続しないため,単位変更の翌日には血糖値がどう変化したかを確認できることだね.

ただし,「血糖変動のパターン」を見て単位を変更していくものだから,数日は変化を見守るほうがいいだろうね.

医学生
医学生
1回きりの血糖変動ではなくて,繰り返す「血糖変動のパターン」を見ながら単位を変更することが大切ですね.

まとめ

カーボカウント#2. まとめ

カーボカウントとは・・・急激に血糖値に変換されるカーボ(糖質)のみをカウントし.カーボ量に合わせた超速効型/「超」超速効型インスリン投与量を決定する方法.

カーボ(炭水化物)=糖質(人工甘味料はカウントしない)

カーボカウントには,「基礎カーボカウント」と「応用カーボカウント」があり,基礎→応用へステップアップする.

基礎カーボカウント・・・糖尿病食・食品交換表の遵守と責任インスリン法による超速効型インスリン投与量の決定.

基礎カーボカウントの指導対象;インスリンを使用している糖尿病

責任インスリン・・・血糖値の責任となる超速効型インスリン

責任インスリン法では,一つの血糖値ではなく「血糖値の差」に注目.

超速効型インスリンの投与単位の調整は1〜2単位ずつ.1回きりの血糖変動ではなく,「血糖変動のパターン」を見ながら投与単位を調整.

参考文献;第8版 糖尿病専門医研修ガイドブック,はじめてのカーボカウント 4版

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